旧辞 ({{engl}})

『旧辞』(きゅうじ)とは、記紀編纂の基本資料になったとされる各氏族伝来の歴史書であると考えられているが、帝紀と同じく散逸しており、現存していない。

古事記序文にある『先代旧辞』(せんだいのくじ)及び『本辞』、日本書紀天武天皇10年3月条にある『上古諸事』はこの書のことと考えられている。

帝紀、旧辞は別々の書物ではなく一体のものであったとする学説もある。

津田左右吉は「旧辞」を記紀の記述のうち説話・伝承的な部分の元になったものであると考えた。

古事記の説話的部分が概ね武烈天皇のあたりで終わっておりその後はほとんど系譜のみの記述となること、また日本書紀の記述もこのあたりで大きく性格が変わり、具体的な日時をあまり含まない説話的な記述を中心としたものからきちんと日時の入った記録をもとにした記述中心に変わっていると見られる等の理由から「旧辞」の内容はこのあたりで終わり、その後まもなくそれまでもともと口承で伝えられてきた「旧辞」が6世紀ころに文書化されたものであると考えた。
この説は現時点で通説になっているといえるが、古事記の序文を厳密に読む限りでは、史書作成のための作業は帝紀及び旧辞の両方に対して行われたものの、古事記自体は帝紀及び旧辞のうち旧辞のみをその内容とするはずのものである。
現在の古事記が系譜と説話の両方を含んでいる以上、「帝紀が系譜を内容とし旧辞が説話を内容とする」という現在の一般的な「帝紀及び旧辞についての一般的な理解」は成り立たないとする見解もある。
また、諸家がそれぞれ持っているとされる『旧辞』のような一定の条件を満たす複数の書物ないしは文書の総称であると考えられる「普通名詞」と、『先代の旧辞』や『勅語の旧辞』といった特定の時点で編纂された特定の書物を示すと見られる「固有名詞」とは明確に区別するべきであるとする見解もある。
また古事記の序文などにはそれぞれ名前は微妙に異なるものの、ほとんどの場合に『帝紀』と『旧辞』をはじめとして二つの史書が並べて記されていることなどから、これらは単に別々のものを並べているのではなくもともと組み合わせることを前提に作られた一体のものであり、二つの史書を組み合わせた中国の紀伝体とは異なる「日本式の紀伝体」とでもいうべき形態が存在するのではないかとする見方もある。

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