鳥居 (Torii)

鳥居(とりい)とは神社などにおいて神域と人間が住む俗界を区画するもの(結界)であり、神域への入口を示すもの。
一種の「門」である。
天皇陵や寺院に建てられていることもあるが、一般的には神社を象徴するものとして捉えられており、神社の地図記号は鳥居を図案化したものになっている。

起源

鳥居の起源については諸説あるが、確かなことは分かっていない。
アマテラス(あまてらすおおみかみ)を天岩戸から誘い出すために鳴かせた「常世の長鳴鳥」(ニワトリ)に因み、神前に鶏の止まり木を置いたことが起源であるとする説、インド仏教にみられるトラナや中国の華表や鳥竿、牌楼(ぱいろう)、朝鮮半島の紅箭門(こうぜんもん)、イスラエルの移動型神殿など海外に起源を求める説などがある。
いずれにせよ、8世紀ごろに現在の形が確立している。

語源についても同様に不明である。
鶏の止まり木を意味する「鶏居」を語源とする説、「とおりいる(通り入る)」が転じたとする説、トラナを漢字から借音し表記したとする説などがある。

数え方

一基、二基…と数える。
一般にひとつの参道に複数の鳥居がある場合は、一番外側から「一の鳥居」、「二の鳥居」…と呼ぶ。

形式

2本の柱の上に笠木(かさぎ)および島木(しまぎ)を渡し、その下に貫(ぬき)を入れて柱を固定したのが一般的な鳥居の構造である。

大別すると神明鳥居(しんめいとりい)と明神鳥居(みょうじんとりい)の2つに分類され、そこから派生した種々の形式がある。
建てられる鳥居の形式は寄進者の好みによる事が多く、鹿島神社に春日鳥居が建てられるような事もあるように祭神と関連を持つことは少ないが、山王鳥居は日枝神社(山王神社、日吉神社)になどと結びつくものもある。

神明鳥居

神明鳥居は素朴な形式で、全体的に直線的である。
笠木・貫には板材が用いられることが多い。
笠木の下に島木がなく、柱は丸材で地面に対し垂直に立てられている。
この形式のバリエーションとして、貫に角材を用いたものが、靖国神社をはじめとする各地の護国神社で広く見られることから、特に靖国鳥居と区別することがある。

神明鳥居

鹿島鳥居

伊勢鳥居

黒木鳥居
靖国鳥居
内宮源(ないぐうげん)鳥居
宗忠(むねただ)鳥居

明神鳥居

明神鳥居は装飾的な形式で、全体的に曲線的である。
笠木の下に島木があり、柱は地面に対して少し斜めに立てられている。

明神鳥居

春日鳥居

八幡鳥居

稲荷鳥居:台輪(だいりん)鳥居ともいう。
朱塗りで知られている。

山王(さんのう)鳥居

両部(りょうぶ)鳥居

三輪(みわ)鳥居

三柱鳥居

中山(なかやま)鳥居

種類(材料)

材料は木材(ヒノキ・スギなど)、石など。
銅板で全体を葺いた鳥居を「唐金(からかね)の鳥居」と呼び、江戸時代には浮世絵などに描かれている。
近年では鉄パイプ、鉄筋コンクリートの鳥居もある。

また佐賀県西松浦郡有田町にある陶山神社の鳥居は陶磁器製、京都府八幡市にある飛行神社の鳥居はジュラルミン製、秋田県八郎潟町にある副川神社の鳥居は塩化ビニール製など、その他の材料による変わり種の鳥居も存在する。

日本三鳥居

吉野・銅の鳥居(かねのとりい)(重要文化財)

金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂の参道に立つ。
室町時代のものと伝えられる。
高さ約8m。

額束は「発心門」

安芸の宮島・朱丹の大鳥居(木製)(重要文化財/世界遺産)

厳島神社・社殿前の海中に立つ。
楠造り両部鳥居。
現在の鳥居は平安時代から数えて8代目で明治8年(1875年)7月に完成したもの。

神額:沖側「厳島神社」、神社側「伊都岐島神社」(有栖川宮熾仁親王染筆)

大阪四天王寺・石の鳥居(重要文化財)

永仁2年(1294年)に造られた日本最古の石造りの大鳥居の一つとされている。

扁額の文字「釈迦如来 転法輪処 当極楽土 東門中心」この地は釈迦如来が現れて説教されたところで、極楽浄土の東門に当たる

その他

伏見稲荷大社

約1万基の鳥居がある。

平安神宮

高さ24.4mの日本最大級の鳥居。

出雲大社

天下の寄付魔、小林徳一郎(北九州市小倉・島根県邑南町)の建立。

気比神宮

国の重要文化財。
木造限定なら3番目の高さを誇る。

元木の石鳥居

国の重要文化財。
山形市にある平安時代建立の日本最古の石鳥居。

他に一般的に利用されているものでは神社をあらわす記号や小便無用、不法投棄のごみ除けなどにも利用が見受けられる。

鳥居に関する俗信

石を投げて鳥居の上に乗せると願いがかなうという俗信が広くみられる。

不法投棄対策

近年、住宅街や空き地などに高さ10~50cmほどの小さな鳥居が設置されている場合がある。
簡素なものは薄い板きれをコンクリートブロック塀に貼り付けただけものや、塀に赤ペンキで描いただけのものである場合もある。
このような小鳥居はゴミの不法投棄を避けるために設置されたもので、鳥居を聖域の入り口として恐れ敬う人間心理を利用したものであり、不法投棄が激減したという実例があるという。
ちなみに実際の鳥居をそのまま模するのは恐れ多いという理由で、貫(下の横棒)が笠木(上の横棒)よりも長くなった本来とは逆の物を利用することもあるという。
これは、(以前は不法投棄はほとんど無かったので)立ち小便抑止の為、塀の下方等に鳥居形を赤の塗料で描いたものが原点のようである。
いずれにせよ、宗教と道徳の関係を如実かつ簡潔にものがたっている。

[English Translation]