叡山電鉄 (Eizan Electric Railway Co., Ltd.)

叡山電鉄株式会社(えいざんでんてつ、Eizan Electric Railway Co.,Ltd.)は、京都市左京区の出町柳駅から八瀬・鞍馬への路線を運営する鉄道事業者。
本社は京都府京都市左京区田中上柳町25番地の3(出町柳駅隣接)。
京福電気鉄道の子会社として設立されたが、2002年から京阪電気鉄道の完全子会社となっている。

概要

叡山電鉄叡山本線・叡山電鉄鞍馬線の2路線を運営している。
これらの路線は京福電気鉄道が運営していたが、沿線から市内中心部直通のバス路線充実に加え、京都市電が廃止され他の鉄軌道線との連絡が絶たれたことにより離れ小島状態になり利用客も減少した。
そのため京福電気鉄道は叡山電鉄を設立して、この2路線を分離した。
しかし1989年に京阪鴨東線が開業し出町柳駅で連絡するようになると、大阪方面からの利便性が向上し、再び活気を呈するようになった。

略称は「叡電」(えいでん)。
ただし、この呼び方は現在の叡山本線が京都電燈の叡山電鉄部であったことに由来し、京福電気鉄道となったあとも、叡山本線・鞍馬線の総称として一般に使われていた。
分社によって、略称が文字通り会社名の省略形となった。
なお、名古屋市に本社を置く家電量販店の「エイデン」は旧社名の「栄電社」が由来であり叡山電鉄とは全く関係はない。

京都市営地下鉄烏丸線が国際会館駅まで延長され、同駅を中心にバス路線網も再整備されため、左京区岩倉地域の住民が市中心部へ向かう場合などの利用がそちらに移転することになった結果、また利用者が減少しつつあるが、パノラミック電車「きらら」を登場させ、各種イベントを開催するなど積極的な利用者確保を行なっている。
2005年は、日本放送協会大河ドラマ「義経 (NHK大河ドラマ)」のために鞍馬方面の観光がブームになり、近年にない賑わいを見せた。

設立当時、京福電気鉄道が京阪電気鉄道の関連会社(現在も、京福電気鉄道は京阪電気鉄道の関連会社である)であったものの、デナ500形導入の経緯などから車両技術面では阪神電気鉄道色が強いなど、独特の京福(叡電)色を有していた。
独立後、1989年の京阪鴨東線開業あたりから、徐々に京阪色も出てきていたが、2002年に京福電気鉄道が京福電気鉄道越前本線列車衝突事故による経営悪化のため所有株を京阪電気鉄道に売却し、同社の完全子会社となって以降、京福色から徐々に京阪色の色合いが濃くなってきている。

スルッとKANSAIでカードに印字される符号はEZである。

歴史

1985年(昭和60年)7月6日 設立。
京福電気鉄道全額出資。
設立時の資本金は1億円。

1986年(昭和61年)4月1日 京福電気鉄道から叡山本線・鞍馬線を譲り受け営業開始。

1991年(平成3年)11月29日 京阪電気鉄道により増資(出資比率60%)。
資本金2億5000万円となる。

1997年(平成9年)10月4日 パノラミック電車「きらら」運転開始。

2002年(平成14年)3月29日 京阪電気鉄道の完全子会社となる。

2004年(平成16年)3月1日 スルッとKANSAI対応カードが全線で利用可能に。

路線

全線が京都府京都市左京区内にある。
各路線の詳細については以下の項目を参照。

■叡山電鉄叡山本線 出町柳~八瀬比叡山口 5.6km

日本の鉄道ラインカラー一覧は比叡山の森から緑
八瀬比叡山口駅からは京福電気鉄道の京福電気鉄道鋼索線・索道で比叡山の山頂まで行ける。

■叡山電鉄鞍馬線 宝ヶ池~鞍馬 8.8km

ラインカラーは貴船・鞍馬山の紅葉から赤
鞍馬駅近くの鞍馬寺には非常に小規模ながら鞍馬山鋼索鉄道(運営主体は鞍馬寺)が走っている。

多客時は臨時ダイヤで運転されることがあり、特に毎年10月22日に行われる鞍馬の火祭においては事実上唯一の交通機関となり、ほぼ全ての車両をフル稼働させるぐらいの運転となるが、それでもピーク時には鞍馬線二軒茶屋駅 (京都府)以北が単線で線路容量に制約がある関係もあって長蛇の列(乗車までに数時間の待ち時間)となる。
しかし逆にこれにより鞍馬の街がパンクするのを防いでいる一面もある。

また、2004年1月からは全路線で一部列車を除いて終日ワンマン運転を行っている。

2007年からラインカラーにちなんだ駅名標を順次設置している。
ラインカラーが取り入れられており、その色の元になったシンボルマークもあしらわれている。
また、ローマ字に加えて朝鮮語と中国語の表記もある。
2007年10月時点で半数ほどの駅に設置済みである。

車両

伝統的に「デナ」「デオ」「デト」といった独特の形式称号が使われている。
営業用車のカタカナの2文字目は「ナ」が中型(なかがた)、「オ」が大型の略称である。
なお、1995年のデナ21形廃車により「デナ」は形式消滅している。
事業用車の2文字目は日本国有鉄道の貨車に準じていて、京福時代には「デワ」も存在した。

デナ500形を除き全て当線区での新造(実質車体新成含む)車両となっている。
これは「デオ」といえども車体長16mクラスの現在の日本においては小型に属する車体であり、車両寿命や冷房化の要求が生じた時点で大手私鉄等から譲り受ける適当な車両がなかったことが大きいとされている。
それゆえに下記のような統一性や「きらら」のような独自の車両を生み出す結果ともなっている。

勾配区間での安全性やメンテナンス面から現存営業用車両は、全て電動車かつ全ての軸が駆動軸であり、抵抗制御と発電ブレーキの組み合わせによる制御となっている。
予備車となっているデオ600形を除きカルダン駆動、冷房装置付である。
車体においては無人駅での乗車券収集の便から車端に客用ドアが存在する。
(2両固定編成のデオ800系、デオ900形では連結面側は少し内側に寄っている)

また、以前の経緯より現存営業用車両の全てが、かつて存在した、阪神系の武庫川車両工業製造となっているが、部品などでは京阪電気鉄道から譲渡され、再利用しているものも多い。

運賃

叡山本線、鞍馬線を通じて、普通運賃は運賃制度区間制、定期運賃は運賃制度距離制となっている。
普通運賃の場合、修学院駅・岩倉駅 (京都府)・二軒茶屋駅 (京都府)・二ノ瀬駅に区界があり、この駅を越えて乗車すると区数が1つ増え運賃が変わる。
また、鞍馬駅方面から宝ヶ池駅で乗り換えて八瀬比叡山口駅方面に乗り換えた場合や、その反対の場合も区数が1つ増える。
このため、たとえば出町柳駅から修学院駅まで乗車した場合は2.9キロメートル乗車しても1区で済むが、八幡前駅 (京都府)から三宅八幡駅まで乗車した場合は、1.5キロの乗車で2区となる。
回数券については普通の大人・小人用(普通運賃の10倍で11回)の他に学生割引回数乗車券(大人用のみ・同15回)、敬老割引回数乗車券(同20回)が設定されている。

普通運賃(2007年10月現在)
1区 - 200円(小児100円)
2区 - 260円(小児130円)
3区 - 320円(小児160円)
4区 - 370円(小児190円)
5区 - 410円(小児210円)

京阪との初乗り区間相互間(元田中~修学院と京阪・丸太町~四条)に大人20円・小人10円の割引が設定されている(事前に自動券売機での連絡乗車券購入が必要。
叡山電鉄側からの場合、自動券売機稼動時間以外は出町柳駅改札で発売される。
なお、スルッとKANSAIの場合は自動的に割引額で引き落とされる)。

出町柳駅では駅員が常駐しており、自動改札機・自動券売機も常に稼動している。
鞍馬駅では始発・終電近くで無人となるほか駅員が駐在しており、その間は自動改札機も稼動する。
他の駅では常に駅員(出札・集改札要員)が駐在している駅はない。
なお、貴船口駅や八瀬比叡山口駅では観光客が多い時期に駅員が駐在するほか、時間を限って駅員が出張してくる駅もある。

乗車時は有人駅では自動券売機で切符を購入し、自動改札機に切符を通す。
無人駅のほとんどでは駅での改札はなく、乗車時に電車の乗車口に設置された整理券発行機から整理券を取るか、スルッとKANSAI共通カードをカードリーダーに通し、乗車駅を記録させる。
無人駅でも時間を限って自動券売機がある駅もあり、そのような駅で予め切符を購入した場合は、そのまま乗車すればよい。
一部の駅では自動改札の内側に自動券売機があるが、現金の場合は改札の横を通り抜けてホームに入り切符を購入すればよい(戻って自動改札に通す必要はない)

下車時に有人駅では改札口で現金を払うか、自動改札機に切符、またはスルッとKANSAI共通カードを通す。
無人駅では運転席横の運賃箱に整理券と現金を投入するか切符を投入する。
整理券には乗車駅を示すパターンが印刷されており、下車駅では自動的に運賃額を運賃箱に表示させることができる。
スルッとKANSAI共通カードはカードリーダーに通す。
定期券は運転士に提示する。

無人駅での乗車口は後ドア、降車口は前ドアとなっている。
3ドア車両の中ドアと2両編成の場合の後の車両のドアは有人扱いの駅を除き締切である。
運賃箱やカードリーダー、整理券発行器は進行方向左側のドア横のみに設置されている。

出町柳駅・鞍馬駅の窓口及び修学院駅の定期券売場では、1000円(小児500円)で全線が1日乗り放題になる「1日乗車券 えぇきっぷ」を発売している。
提示するだけで沿線社寺や観光施設で拝観料・入場料の割り引きを受けたり、粗品の進呈を受けたり、沿線の飲食店・土産物店で特典を受けることができる。
通用日は自動改札機または車内のカードリーダーを通すことによって、裏面に印刷され決定する。
無人駅での乗車時には最初の乗車時以外カードリーダーに通す必要はないが、無人駅での下車時には必ずカードリーダーに通す必要がある。

[English Translation]